事実が一番うそ臭い日記

ホテルが全館停電という、未曾有の有事に遭遇した。
しばらくの間は、非常灯のおかげで何とか明るさを保っていた。
しかし2時間もすると、非常灯のバッテリーがなくなりホテル中真っ暗になってしまった。
停電で真っ暗のホテルを懐中電灯一つで歩くのは、そらもう恐ろしい。
真っ暗だけど、静まり返っているわけじゃない。
人のいる客室だってあるわけだから、廊下を歩いていると暗闇の中からささやき声や物音が聞こえてくる。
もう廊下を歩きながら、突然聞こえてくる物音にいちいちビクつくありさま。

そんな中、とある客室から男女の言い争う声が聞こえてきた。
こんな停電のさなか何を揉める事があるだろうか。
もめるならせめてホテルを出てからやろうよ。
なんで、暗闇の中言い争う必要がある。

そんなことを思っていると、ホテルの電気が復旧した。
ホテルのどこそこから、歓声があがる。
ホテル中が何かを成し遂げた感でいっぱいだった。

しばらく後処理でバタバタした後、ふとさっきの言い争いのことを思い出した。
どんな人が泊まってるんだろうと思って調べてみると、言い争いが聞こえたフロアは団体の予約が入っていて、あの時点では誰も泊まっていなかった。

じゃあ、僕が聞いたあの言い争いは何だったんだろうか。

今回のことに関係があるのかはわからないけど、10年以上前あのホテルで若い男が痴情のもつれで女を刺し殺す事件が起きたらしい。