言葉は盾よりも脆い

今日久しぶりに古い知り合いと御飯を食べた。
意外と思い出話にならなかった。
かといってプライベートを明かせないスネに傷持つ二人。
話は自然と世間話になった。


秋田県の殺人事件、容疑者の畠山さんて危険な色気を感じるよな」
スポーツ新聞の記事を読みながら呟いた。
「そうか?俺は苦手な感じやけどな」
「いやいや、危ないのはわかっていながら誘われる色気ってあるやん。中一の時ヤンキーのお姉さんに呼び出された時にゾクッと感じるあれに似てる感じ」
「その感じがわからへんもん」
そんな会話を笑いながらした。


周りの客が僕達二人を蔑むような目で見ていた。
一通り話し終えたところで、偶然食堂のテレビで件のニュースの続報が流れた。
僕達は黙ってテレビ画面を眺めた。


「やっぱ不謹慎なのかなあ」
「でも、小一で死んだ彼の無念も遺された遺族の悲しみも、僕達には救う事も共有してやる事も出来ないしさ」
「そうやな」
「じゃあ、せめて笑ってやりたいよな」


声には出さなかったけど、僕達はそんな会話をしたんだと思う。


「でもやっぱ危険な色香を感じちゃうんだよなあ。ベッドの上でプレイの最中クビ絞められたら興奮しちゃうだろうなあ」
「だから不謹慎だって」


どれだけ笑っても、やっぱりやりきれないよなあ。