ニュースを斬るっていうと、なんだろう。文化人みたいじゃん。

テレビのニュースを観ていたら、こんな事件を伝えていた。
ある男が、刃物で女性二人を殺した。
ここでは仮に、その男の名前を高橋被告と呼ぶ事にしよう。
高橋被告は、自分が唯一心を開いていた人間の死に対して、
病院側の治療法に恨みを持った。
そして、その病院の院長を殺そうと計画した。
この病院の場所を仮に、静岡ということにしよう。
静岡県のとある病院に、刃物を持って押し入った高橋被告。
運悪く院長は不在だったが、刃物を持った姿を見られたとして、二人の病院職員の女性を刺し殺した。

テレビは事件の顛末をここまで伝えると、今度は高橋被告の異常性を語り始めた。
おどろおどろしいBGMとナレーションに乗せられて語られていく、高橋被告のエピソード。

幼い頃に両親が離婚したこと。
親に暴力を振るっていたこと。
そして、テレビが決め球として用意したエピソードは、高校時代の卒業文集だった。
最後に一言というコーナーに、高橋被告は“ALL SYSTEM BROKEN”と書いていた。
“すべてのシステムは壊れた”
取ってつけたような和訳が、テレビにおどろおどろしく流された。

しかし、恐怖心と異常性を煽るテレビ画面を良く観るとあることに気づいた。

高橋被告の上に書いてある言葉は“丸いものには角がない”。
下に書いてある言葉は“特にない”。

おいおい、こいつらの方がおかしいじゃねえか。

思春期の高校生が、破滅性や虚無感に憧れるのは、むしろ健全といってもいい。
しかし、“丸いものには角がない”ってなんだ?
“特にない”ってダメだろ。

「さあ、高校時代の締めくくりとして、何か一言書きましょう」
って言われて、“丸いものには角がない”ってスッと書いた奴も“特にない”って投げ出した奴も、限りなくアブノーマルだぞ。

この二人が今何をしているのか。
高橋被告の裁判の行方よりも、それが気になる。