旅先でのひとこま

旅に出かけるなんてまあ大げさな言い方をしたけど、単なる極私的レジャーに出かけただけなんですけどね。
まあ、書きたいことも書いておきたいこともいろいろあるんだけど、それはまた別の機会に。

雲ひとつない青空の下、一人の年老いたやくざに会った。
真上から照り付ける太陽が、老いたやくざの皺を色濃く縁取っている。
「最近の若い奴は、簡単に刺青入れよるやろ。別にそれがあかんとは言わんけどやな。あのファッション感覚でわざと見えるとこに入れとる奴おるやろ。あれは違うわ。刺青云うのは、男の覚悟や。男の覚悟は、人に見せるためのもんやない。自分で背負うもんや。」
老いたやくざは、そう言った。
汗で張り付いたTシャツに、激流を昇る鯉の刺青が浮かび上がっていた。
刺青の鯉には、半分しか色が入っていなかった。

こんなことが旅先であった。