冷やし中華始めました

さあ、今日も朝から夕方まで当てもなく街をふらつきました。
自動販売機があれば、そりゃお釣りが出るところに指突っ込んで。
そんなことをしていると、住宅地の中に一軒の喫茶店を見つけた。
一軒家の一階を改造したと思われる店構え。

店頭に一枚の張り紙が出ていた。
『おいしいコーヒーはじめました』
まさか、喫茶店なのに今までコーヒーを出していなかったことはないだろう。
そうなると、つまりまずいコーヒーからうまいコーヒーに替えましたって張り紙だよね。
何たる開き直りと自信だろうか。
「今までのはまずかってでしょ。だっておいしいコーヒーじゃなかったんだもん。でもねえ、今度おいしいコーヒーはじめたのよ。飲んでみて。」
ってことですよ。

物は試しに飲んでみようと思ったんだけど、さすがにそこまで思い切れなかった。
数えるほどの席数が示すように、完全に地域密集知り合い商売。
それに加えて、おそらく店主の娘とその友達であろう少女が、店前の道路でバレーボールをしている。
こりゃまいった。
少女の横を通った時に「お父さん、お客さん。」なんて言われたら、顔面から火を噴いて逃走しちゃうよ。
明治女の恋愛のようにね。

『おいしいコーヒーはじめました』
彼にそう言わしめるコーヒーってどんなコーヒーなのだろうか。