梅雨の奇跡

久しぶりの快晴に朝からテンションが上がる。


この世界には愛が満ち溢れている。
この世界には愛が満ち溢れている。
すまない。
僕がすべて独り占めしてるのさ。
僕がすべて独り占めしてるのさ。


そんな戯言を心の中で繰り返しながら歩いていた。


そんな穏やかな日常に突然のハプニングが襲い掛かる。
突然にして猛烈な差し込みがやってきた。


腹を出したのが悪かったのか
それともダイエットの終了を祝してファンタオレンジを
牛飲したのが良くなかったか。


原因はともかく、ケツ周りが風雲急を告げる
事態に見舞われている。


鼻に浮かんだ厭な汗を拭いながら、
近くのコンビニに駆け込んだ。


ホワッハプン!ホワッハプン!


トイレの貸し出しは行っておりませんの一言で、
すげなく追い返された。


もうダメだ。一生の恥を覚悟して力を緩めよう。


諦めかけた僕の目に、不動産屋の看板が飛び込んできた。


最後の望みをかけて這いつくばるように不動産屋に入ると、
意外にもこころよくトイレを貸してくれた。


すばらしい。
次、引っ越す時はこの不動産屋に任せよう。


一難去ってご満悦の表情でトイレから出ていくと、
カウンターの上にサンガ戦の招待券が置かれているのが
目に付いた。


どうやら販促品のようだ。


そこは、もういい歳をした大人の僕ですから、
めいいっぱい物欲しげな目で招待券を見つめた。


僕の視線に気が付いた店員が、
よろしければお持ち帰りくださいと言ってくれた。


否、言わせたのだ。
僕のサンガ愛が。
違う、僕の卑しさが。


僕は甘え上手なので、勧められるがまま招待券を4枚
ポケットにねじ込んだ。
有効期限の7月末までのホームゲームは4試合あるからね。


ふと、店員と目が合うと明らかに4枚も取るのかよ、
という顔をしている。


イレギュラーなことに滅法弱い僕は
「4人家族なんです」とどうしようもない
ウソをついてしまう。



とにかくチケットは手に入った。
これでもまだ、誰もサンガ戦に行かないか。