歌舞伎町血風録

それは、語るに恐ろしい男達の戦いの記録である。
東京に用があるからついでに歌舞伎町で遊びましょう。
という知り合いにお供する事を決めた時に、あの惨劇は始まっていた。
夕方過ぎ、新宿についた僕達。
とりあえずは戦闘前の腹ごなしということで居酒屋に入る。
とりあえず、おいしく楽しく酒の席を楽しんだりしてみる。
そして、夜が深くなったのを見計らって歌舞伎町へと足を踏み入れる。
「アジア一の歓楽街がなんぼのもんじゃい。」
「一発ガツンいわしたるやんけ。」
と気合十分の僕達。
おー、よって来るねえ、風俗の客引きどもが。
まあ、そう急くな。僕達は、戦いに来てんだよ。
戦うには相手の情報を良く知らないとね。
「しかし、客引き多いですねえ。」
と言おうと知り合いの方を見ると。
ダ、ダメだ。この人完全に飲まれている。
彼だってそこそこの遊び人だよ。
いや、関西なんかじゃブイブイ言わしてるくらいだよ。
その彼がびびってるんだもん。歌舞伎町おそろしや。
「ボッタクリあるの?どこボッタクリ?どんな店がボッタクリ?」
と繰り返すばかり。
ダメだ。ここは、僕が盛り上げていかないと。
「わかりました。おっぱいもめる店行きましょうよ。」
って言ってみたわいいけど反応したのは、彼じゃなくて屈強な黒人だった。
「オキャクサン、オッパイパブーあるよ。」
「オッパイどー?オッパイパブー。」
しまった。とりわけやばそうな客引きにひっかかっちゃったよ。
「タカツ君ダメだよ。目合わしちゃダメだよ。」
ダメだこの人。完全に尻が込みしてるよ。尻込んでるよ。
もうダメだ。これ以上はいかん。
ということで無料紹介所でキャバクラを紹介してもらう事に。
なんだか、中国からの観光旅行客みたいで恥ずかしいけど仕方ない。
セーフティーファーストですよ。
そしてキャバクラに連れて行かれて、それからはもうこっちのもんですよ。
キャバクラ嬢無視のボケ合い。
ホストされる気なんてありません。
食うか食われるかの真剣勝負。
店を出た頃には、みんなぐったり。
重い足を引きずってカラオケボックスに。
仮眠を取る、もう若くない男達。
早朝、歌舞伎町には若い男女が夜の終わりを惜しんでいる。
僕達は、電車が走る音が聞こえてホッとする。
歌舞伎町おそろしや。