夜道

AM1:36
寒い。寒すぎる。
10月とは思えない冷たい風が容赦なく体に打ち付ける。
手の感覚がなくなってくる。
なぜこんなひどい仕打ちにあってるのかというと、
今日軽いノリで大阪に呼び出されたからだ。
いつものように面白メンバーとダメトークで盛り上がりたかっただけなのに。
どうせ、競馬場まで原付で行ってんだからそのまま大阪行けばいいか。
と甘い判断をした時に、僕の戦いは決定していた。
面白会議も終了し、いざ帰るってなった時に気が付く。
夜って寒いんだよ。
こっちは、昼のポカポカ陽気にあわせてTシャツに薄手のスカジャンしか着てないんだよ。
なのに、気温はすっかりニアリーイコール冬だもん。
こんな夜中に国道走る原付なんて他にないよ。
原付どころか、車だってタクシーくらいしか走ってないもん。
そのタクシーも、大阪市内を出ると見当たらなくなるし。
夜道は、別の顔だよ。
もう風景も昼とまったく違うんだ。
全然知らない道を走っているような感覚に陥る。
しかも国道沿いは、生活臭がしないから孤独になるんだ。
たまに見かける、エロビデオ屋のネオンにほっとしちゃうくらいだもん。
しかし、なによりつらいのはやっぱり寒さ。
寒いったらありゃしない。
まず、手の感覚がなくなり、次に足の感覚がなくなる。
寒さを紛らわそうと歌を歌えば、歯がしみる。
そんな寒さなんだよ。
けど、寒さがすごいから深夜なのに眠くならないのはよかった。
もう、寝たら死ぬのが目に見えとるからね。
まあ、それが事故死になるか凍死なるかはわからないけど。
ほんとそれぐらいの寒さ。
夜をなめちゃあいかん。
AM3:35
結局、死ぬ思いで50キロを走破しました。
部屋に着いたときの安堵感は、非日常の賜物だよ。
でもねえ、つらかったけど楽しくもあった。
始めて、昆虫採集に行った日。
始めて、徹夜した日。
始めて、恋人が出来た日。
それに近い、肌がひりつくような青い想いをした気がする。
丸くなるのは、まだまだ早いな。