旅立つ人への送辞

まずは、ご卒業おめでとうございます。
初めてあなたと会った日の記憶は、まったく覚えていません。
僕が覚えているあなたは、楽しい楽しいといいながら小道具のピザを作っているのが最初です。
早いもので、あれから4年間の付き合いになりましたね。
何度、たらふく、ハイライトでご飯を共にしたことでしょう。
何度、僕のわがままであなたを振り回したことでしょう。
人生を通して何人の苦楽を共にする仲間に出会えるのでしょうか。
あなたは、間違いなくそのうちの一人です。
さて、あなたが一番記憶に残っているのは何でしょう。
北海道空港事件でしょうか。
電話越しに、千歳空港から札幌までの電車賃の高さに憤慨する私にあなたは言いましたよね。
「じゃあ、車で空港まで行くから待っててください。」
40分後、家族に車で空港まで送ってもらったあなたといっしょに、バカ高い運賃を取る電車に乗りましたね。
あなたは、何をしにきたんでしょうか。
車で札幌まで連れて行ってくれるわけじゃなかったんですね。
札幌といえば、こんなこともありましたね。
帰りの飛行機に乗り遅れそうになった私たち。
みんなが走って飛行機に向かう中、あなたは手荷物検査に引っかかっていましたね。
「お荷物に、刃物類は入っていないでしょうか。」
という空港職員の問いかけに対して、あなたはかばんから十数本のカッターナイフを取り出して職員たちを驚かせましたね。
小道具を作るためとはいえ、機内に十数本のカッターナイフを持ち込もうとした人物はすんなりとは搭乗できませんでしたね。
挙句の果てに没収をすすめる職員に向かってどうしても必要だからといって面倒な手続きをしていましたね。
あの時点で、すでにあの飛行機の離陸予定時間は過ぎていましたよ。
そういえば、沖縄にも行きましたね。
海と基地で大興奮するあなた。
ひめゆりの塔では、わき目も振らず一直線で出口に向かって行ったあなた。
私たちは、その素直さに嫉妬すら覚えました。
大雨のディズニーシーで、風でうまく傘が差せないからと言って、傘をゴミ箱に捨てたあなたの姿を忘れません。
もちろん、その後一人だけずぶ濡れになっていた姿も忘れられません。
思い出話は尽きることがありませんが、湿っぽくなる前にこの辺でやめておきます。
あなたは今日、ひとつの道を思い出にしまい、新たな道を歩むことになります。
思い出に恥じない、楽しい道にしてください。
そしていつの日か、また私たちを楽しませてください。
本当に、ご卒業おめでとうございます。
そして、ありがとうございました。
高津ビルディング座長 タカツ