ファンタジー現代

今日珍しく、夜の深い時間に電車に乗っていた。
前の座席に、ディズニーランドの紙袋を両手いっぱいに握り締めたおばさん三人組が座っていた。
どこからどうみてもディズニーランド帰りだ。


あー、おばさん三人でディズニーランド行ったりするご時世なんだね。


ほのぼのとした気持ちで三人の話に耳を傾ける。
楽しそうに話すおばさんたちに頬が緩む。
でも、話を聞いていても何故だかディズニーランドの画が浮かんでこない。


話の内容がどうもヘンだ。


「あれやなぁ、日産がおもしろかったなぁ」


「私あんなんあかんわ。怖くて目あけれへんわ」


「そうやなぁ。第一生命くらいがええ感じやな」


「私も第一生命はまだ大丈夫やわ。けど私は新日本石油みたいなんが好きやわ」


「あれよかったぁ。あんなんはもう一回乗ってもよかったな」


頭の中で?がまわる。
電車を降りてからも、おばさんたちの会話が気になって仕方ない。


まさかと思って本屋に飛び込んだ。


やっぱり。


やっぱり。


そうだったのか。


おばさんたちはディズニーランドのアトラクションをアトラクション名じゃなくてスポンサー名で認識していたのだ。
ファンタジー溢れる夢の国を企業広告の国として認識していたのだ。


それでは、以下におばさんたちの会話をファンタジー翻訳してみよう。


「あれやなぁ、スプラッシュマウンテンがおもしろかったなぁ」


「私あんなんあかんわ。怖くて目あけれへんわ」


「そうやなぁ。ビッグサンダーマウンテンくらいがええ感じやな」


「私もビッグサンダーマウンテンはまだ大丈夫やわ。けど私はジャングルクルーズみたいなんが
好きやわ」


「あれよかったぁ。あんなんはもう一回乗ってもよかったな」



おもしろいことは見つけるものでも作り出すものでもない。
嗅ぎわけるものだ。
書を捨て斜に構えろ。